完全に自分の覚書です。内容に関してのツッコミはご容赦願います。
引用元は一次情報を載せておりますが、解釈は個人的な印象ですので、正確な法的アドバイスを得られたい場合は、専門家へお問い合わせいただくようお願いいたします。
そもそも著作権とは
著作権は「著作物および著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。」ことを目的として制定されたもの。著作者に与えられる権利の内容として、第21条~第26条で、以下の権利が挙げられています。
(複製権)(上演権及び演奏権)(上映権)(公衆送信権等)(口述権)(展示権)(頒布権)(譲渡権)(貸与権)
ざっくり言うと、「制作物を、もともとのクリエイターに黙って勝手に第三者が利用しないでよね」ということになります。クリエイターの立場を尊重した権利ということですね。
例を挙げて考えてみます。何かの小説を原作とした映画を作る場合、小説家が著作者。映画化したい人(映画会社とします)が、契約によって著作権の譲渡を受けたい人 になります。
著作権の譲渡 とは。著作権法第27条、28条を含む の意味
著作権の譲渡を契約に盛り込む目的は、譲渡を受ける側(映画会社)が、その小説を映画化したい(利用したい)からです。こういった譲渡契約の文面には、
第●条(著作権の帰属)
本制作物にかかる一切の著作権(著作権法第27条および第28条で定める権利含む)は、乙に帰属するものとする。
2.甲は著作権人格権について、一切行使しないものとする。
のように、しばしばカッコ書きで(著作権法第27条、28条を含む)という一文が見られます。
制作者から見た視点で、あらためてこの一文について、ひいては「著作権譲渡」について、考えてみました。
まず、著作権法第27条と第28条の内容は、以下の通りです
(翻訳権、翻案権等)
https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000048 e-Gov 法令検索サイトより引用
第二十七条 著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。
(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)
第二十八条 二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。
第27条の内容は、今回の例の場合、原作を書いた小説家は、その映画化権やその他翻案権を持つ、ということ。映画化させる、させないの判断を小説家だけが決定できます。
ここで、小説家が映画化してもオッケーだよ、と言って映画が出来たとします。
その場合完成したその映画=二次的著作物に関しては、映画会社=二次的著作物の著作者 原著作物=原作小説 となります。
そこで、第28条の内容が意味を持ってきます。
第28条によれば、小説家は映画の利用に関して、映画会社と同じ種類の権利を持つ ということ。つまり映画会社が自分の作った映画を公開したりさらにアニメ化する権利を持つのと同じように、小説家本人も、その映画の利用に関しての権利を持ったままとなります。つまり映画会社は、小説家の許諾なしでは勝手に色々商業展開することができません。
さらに、以下に定められているように、著作権は譲渡することができます。
(著作権の譲渡)
引用元 同上
第六十一条 著作権は、その全部又は一部を譲渡することができる。
2 著作権を譲渡する契約において、第二十七条又は第二十八条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する。
ということで、契約書のなかで譲渡に関する文言のなかで、明示的に「著作権法第27条、第28条を含む」と記載されている意味は、ここにあります。
21条から26条で定められた複製権や上映権には但し書きがないのに、27条、28条に関してのみ譲渡の際に明確に「これも譲るね」と書かないといけない、となっているのは、なぜか。
私見ですが、「もともとのクリエイターから、原作のみならず、その作品をベースとしてアレンジしたものに関しても、譲渡が行われたんだよ」ということ・・・つまり、クリエイター的には、もとの作品に関するほぼほぼ全部の権利を譲渡する、ということになるのだ、という「念押し」の意味と、譲渡する側・される側双方、きっちり認識しとこうね、ということのあらわれなのかな、と思います。
著作者人格権を行使しない の意味
この関連で目にする「著作権を譲渡する側が「著作者人格権」を行使しない」の意味については、個人的にはこう考えています、
著作者人格権には「公表権」(その作品を世に出す判断)が含まれています。そして、そもそも著作者人格権は、他人に譲渡することが不可能な権利です。つまり、利用側(今回の例でいうと映画会社です)が、原作者から著作権を譲りうけて映画を作ったとしても、原作者が「いや、そもそもこれ、公表したくないんで!」と主張してしまったら、せっかく作った映画も公開できなくなる可能性があるのです。映画会社としては、それは避けたい。なので、「著作者人格権を行使しない」の一文が必要になるということです。
ただ、著作者人格権には「氏名表示権」や「同一性保持権」という、著作者にとっては大事な権利も含まれているので、それも行使できない、となると、譲渡をうけた側の良心が大事になるような・・・。これはなかなかリスキーだよなあ、という印象を受けました。
著作権の譲渡・・・
ここまでの印象だと、制作者は、みだりに著作権を他者に譲渡しないほうがよいのでは?と個人的に思うのですが、それでも、原著作者が他者に著作権を譲渡する例は多数あるようです。私が直接目にしたことがあるのは、音楽関連で作詞作曲者がその楽曲の権利を他者に譲渡する(そのかわり、報酬を受取る)契約ですが、調べた結果では、イラストレーターと出版社、小説家と出版社、プログラマーと開発会社でも、同じように著作権の譲渡という例があるようでした。理由としては、クリエイターがクリエイティブ活動に専念できるように、とか、出版側がプロモーションを含めた自由な活動ができるように、という「餅は餅屋」的 分業思考があるのではと思われます。
著作権譲渡に関しては、検索をするといろいろな意見を目にすることができます。ひとつひとつ、考えさせられる主張だと思いました。
相当古いけど、なるほどなと思った音楽業界の記事
イラストレーターさんの記事。著作権譲渡ではない契約のために
Webサイト制作における業務委託契約と著作権
では、Webサイトをクライアントから受託した場合、制作者としてどのような契約が最善なのか。
私の手元には契約書の雛形が複数ありますが、そのどちらも、著作権に関しては「報酬と引き替えにクライアントに譲渡」でした。(27条、28条についての文言はなし)
しかし、そのサイト構築の制作過程で生まれたデザイン考案や再利用可能な要素などについては、クライアント提供のものはクライアントに、それ以外のものはサイト制作者に留保するという条文があり、サイト制作者の権利が保証されていると感じました。逆にそこを保証したうえでサイト自体の著作権をクライアントに譲渡することによって、クライアント自身が制限なく完成したサイトの利用を迅速に行うことができます。実際のWebサイトの利用シーンに適した契約だと思いました。
まだ、手元にある契約書ひながたが活躍できる場面が訪れていないのですが、今回あらためて調べて考察したことによって、著作権周辺のことがだいぶ腹落ちしました。クライアント、受託者双方がきちんと契約の内容を理解して協力することが、結局はサイト閲覧者や顧客に対しても良い結果を生む「三方よし」となります。何でも「納得したうえで臨む」ことは大切なのだと感じました。
手元にあるWeb制作に関する契約書はこちらから入手しました↓
・「ウェブさえ」さんのポスト まだ配布されているかな・・・。カワイイ解説冊子も添付されています。https://x.com/websae2012/status/1777542353554956603
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