黄斑円孔入院記(3)

黄斑円孔

出産以外は入院経験のなかった、50代会社員事務職が
オウハンエンコウという眼の病気にかかった時の話です。
かかりつけの医師に紹介状をもらい、大学病院に行きました。
(まだ入院しません。長いってか)

「手術の適応」

左眼で見ると「エクセルの罫線が歪んで見える」と訴えたところ、どうやら網膜に亀裂が入っているらしい。そこで、かかりつけの眼科から、地域で一番大きい大学病院への紹介状を書いてもらうことになりました。
「一週間後に来てね」と指示を受け、12月の中旬。書いてもらった紹介状を眼科で受け取ったその足で、大学病院に向かいました。大学病院なんてほんと出産以来です。コロナ禍ということで、入り口にショッピングセンターによくある、タブレットのようなものに顔を映すと対応が測定できる機械があり、手を消毒して中に入ります。診察券(ほぼ20年ぶりに使う・・・よく家で失くしてなかったなと自分に感動した)を機械にとおし、「紹介状あり」のボタンを押して、受付番号を発行してもらい、案内画面の通りに眼科の受付に向かいます。朝の10時前には到着していたのですが、結果的に言うと、とても長い一日となりました。


まず検査に呼ばれ、症状の確認。視野が欠けている自覚があること、歪んで見えることなどを伝えたあと、網膜まわりの写真をとりました。これはOCTという、網膜のCTのようなものだそうです。網膜のなかでもピントがあって映像を感知する、カメラでいうとフィルムにあたる部分の病変がわかるそうです。その後、視野検査・視力検査を経て、いよいよ主治医の先生の診察となりました

各種の検査結果を見ながら先生がおっしゃった病名がタイトルにもある「黄斑円孔」です。おうはんえんこう。網膜の中心部(黄斑部)に亀裂が入って、穴が開いているとのこと。
「手術の適応となりますね」とさらっと言われましたが、しゅじゅつのてきおうとなりますね ってどういう意味?とまずはぽかん。すると、「手術をすることをお勧めしますよ、ってことです」とのことでした。

へ?手術?

実は、午前中大学病院に行くことになったことで、きっと待ち時間が多いだろうなと思っていた私は、会社に休みを届出ていました。が、午後イチぐらいにはきっと診察も終わって、そのあとの時間でどこ行こう、映画とか見ちゃおっかな~ ぐらいに思っておったのです。

なので、まずは「手術」というワードにびっくり。そして、眼の手術というとレーシックなどのイメージしかなかったので、おずおずと、あくまでも長めに見積もったつもりで「それは、1泊2日ぐらいなものなのでしょうか?」と聞くと、帰ってきた答えが驚愕の
「それがねぇ、申し訳ないけど2週間ぐらい入院になっちゃうんだよねぇ」

2週間????

初回に書いたとおり、私の仕事は月初に会計締めがあって、そこが繁忙期となっています。大学病院に行ったのは12月中旬。次の会計締めは1月の初旬です。さらに1月は第三四半期のまとめをする必要がありました。かといって12月末~正月 というのも直近すぎて気が重い(わがまま)。そして私には、4月以降は退職して自由時間が多くなる予定がありました。
そのことを先生に申し上げて、4月以降なら手術日程も組みやすいのですが、というと、かぶせるように「4月では遅い」との返事。「こうやって見つけてしまった以上、僕としてはすぐに何か手を打ちたいんですよ。だめですかねえ」

四月では遅い=結構やばいのかこれ?

そのときの「ちょっとまってわたしまだ現実に追いついていない」感は、今でもふわふわと思い出されます。とかく私は、何かヤバいorいつもと違うことに接すると、傍目からは冷静に見えるらしいです。ちょっと自分の外側に一枚の膜が張ったみたいになって、周囲からダイレクトに刺激が伝わってこない。というかキチンと耳に入っているはずなのに、水の中で聴く音のようにちゃんとリアルタイムで物事をかみくだいて理解していない。そんなことが、逆にはたからみると「肝が据わって対峙している」ように見えるというだけなんだと思います。そしてリアルタイムで受け止めなかった刺激物は、じわじわとあとから効いてくる。

手術すること自体にとくに拒否感はなかったので、同意書と説明を受け、日程が決まっていないにしろ、入院にあたっての事前の検査でレントゲンや採血が必要になるということで、そのまま病院内の検査室に向かいました。その時も「手術かー。入院かー。」とふわふわしていました。
すでに午後。ふと気が付くと、やたらおなかがすいていました。

日程決めをする

検査室の待ち時間で、Googleカレンダー見ながら色んな日程を確認しました。まず会社のスケジュール。そして車検。そして家族の用事と自分の趣味の日程。すべてをやりくりすると、なんとか1月の後半なら、2週間それらすべてに穴が開いても大丈夫そうな日程がとれそうでした。

検査が終わって、先生に「1月の後半でしたらなんとかなりそうです」と伝え、手術日程は1月20日に決まりました。

そもそもこの黄斑円孔、網膜に穴があいた原因は、眼球の中にあるけど大して役目をはたしていない「硝子体」というぶよぶよした物質が加齢によって固くなり、収縮してしまうついでに周囲の網膜をひきつれてペリっとはがしながら縮んでしまうことが原因のようです(と、理解したけど違ってたりして)
ですので、手術の内容としては、この「硝子体」を削除してしまうということになります。図解していただいたのですが、なんか棒みたいのを目にさして、そこからうにって硝子体をとる・・・すみません、まったくわかっていません。とにかく、「比較的最近になって開発された手術で1時間ぐらいで終わり、難しい手術ではない」ということ、「部分麻酔なので体にあたえるダメージが少ない」ということがわかりました。

では、なぜ2週間という入院期間になっているのか

それは、「切除した硝子体のかわりにガスを充てんする」 そして
「そのガスをきちんと網膜に空いた穴に当てるために、穴、つまり眼底を天井方向に向けた姿勢でいなければならない。すなわち、一日中ずっとうつぶせで生活する」必要があるから、なのでした。

うつぶせ生活、って・・・?

先生曰く、手術そのものの何倍もこのうつぶせ生活がキツいらしいです。この日の診察と説明はこれで終わり、あとは入院前にもういちど診察を受けるのと、入院の手続きをすること、PCR検査の予約をとることなどを指示され、頭の中が「おなかがすいた」7割「うつぶせってどういうことじゃ」3割ぐらいになりながら帰宅。その夜は遅くまで「うつぶせ」「黄斑円孔」「硝子体切除手術」「入院生活」などなど、手当たり次第に打ち込んでは検索をしておりました。
(続く)